里親・一時預かりボランティアの募集:つぼみ

4年前の今頃、1か所から46頭もの猫たちの受け入れとなった保護がありました。現場となった家では、私たちが介入する何年も前から、猫たちの多頭飼養がなされていたようです。猫たちにフードはそれなりに与えられていたようですが、室内や敷地内にゴミが山積し、ノミが蔓延するという衛生の問題、また近親交配に由来する遺伝的な問題のためか、多くの猫たちは目や鼻にかなり重い疾患を抱えていました。もちろん、動物病院での受診や適切なケアがなされているわけでもありません。

 保護した猫の中には、私たちが関わった時点で既に妊娠しており、後に出産した猫も2頭いました。今回紹介するつぼみも、そうして生まれた猫の1頭です。

 

私たちが保護の為に介入するケースでは既に状況が悪化していることがほとんどで、衛生、栄養、当事者・周囲の人間からの虐待など、多くのストレスが動物たちに加えられています。

 自然的な環境下にいる動物にとって、出産・育児は本能的な行為のはずですが、過剰なストレスは動物のそうした本能をも狂わせてしまうようです。

 保護の過程で出産がなされたケースは他にも幾度かありますが、授乳や仔猫の世話をしなかったり、生まれた仔猫を噛み殺したり、踏み潰してしまうような母猫もいました。生まれてきた仔猫たちの中に、明らかに育たない仔猫がいた場合、母猫がその世話をしないということはありますが、そうしたものとは異なる異常行動です。

 この保護のケースでは、衛生面をはじめとして、ネグレクトといえる様々な問題があったにせよ、猫たちに対しては物理的な暴力や威嚇などは加えられることがなかったためか、総じて猫たちの性格は穏やかで人馴れしていました。つぼみの母猫のシェリーはその中でも、とりわけ物静かで愛情深く、面倒見のよい猫でした。

以前言及したサービスエリアでの猫の保護で、最後の保護となったのは、サービスエリアの「主」と呼ばれていた黒猫が産んだ仔猫たちでした。病弱な仔猫が多かったサービスエリアの猫たちの中でも弱々しかったその仔猫たちですが、猫たちの保護作業を何かと気遣っていただいた清掃作業員の方達の努力によって、ほとんどは里親が見つかり、特に虚弱な仔猫2頭を私たちが保護預かりすることになりました。

仔猫たちのケージの隣にはシェリーがいました。ケージ越しに仔猫たちが母猫を求めるようにシェリーに向けて手足を伸ばし、顔を摺り寄せようとし、シェリーも、仔猫たちを優しく見守っている様子だったので、仔猫たちの鼻炎が治まったタイミングで猫たちを一緒にしました。

シェリーは仔猫たちに対し、自分の子供のように傍から離れず、グルーミングをしたり遊び相手になったり、食事もまず仔猫たちにさせてから自分の分を食べるというように、仔猫たちの面倒をよく見、仔猫たちもシェリーの傍で眠り、成長した仔猫たちはその後、里親のもとに行きました。

シェリーのように、自分の子でなくても、また相手が成猫であっても、興奮したり、鳴きはじめる姿を見たりすると、すぐ傍にかけつけ、気分を落ち着かせるようにグルーミングをしたりする気立てのよい猫は確かにいます。

 

幼少時に親猫と一緒にいることが猫の社会性の発達において重要であることが指摘されています。何らかの事情で母猫と一緒にいることができない仔猫を保護した際、親代わりになって仔猫のケアをしてくれるシェリーは、ある意味ではピース・アニマルズ・ホームにずっといて、そうした役割を担い続けてほしいと思わせる猫でした。

母猫としては完璧といってよいシェリーが出産した仔猫たちは、当初は順調に育っていましたが、おそらく近親交配による遺伝的な問題によるものとみられる原因により、1~2ヶ月の内に次々と亡くなってゆきました。唯一、生き残ったのがつぼみです。

仔猫の頃は通常の猫と特に違いはありませんでしたが、成長するにつれて、つぼみには変化が現れるようになりました。

つぼみは4歳を超えていますが、同年齢の猫と比較すると明らかに体は細く、小さいです。食事に好き嫌いはなく、食欲は旺盛で他の猫たちと同じくらいの量を食べますが、おそらく栄養を吸収しにくい体質であると考えられます。

 

日によって程度に変化はありますが、ほぼ慢性的な鼻炎と目脂があります。先天的に抵抗力や免疫力が十分ではないのだと思われます。

外貌については目鼻の造作がアンバランスで、口唇裂との診断がなされています。歯列は揃っておらず、鼻炎による鼻呼吸のしづらさもあり、口を半開きにしていることが多いです。

つぼみと同じ場所から保護した猫の中に、つぼみより年長で、よく似た外貌、体型の仔猫がいました。保護時の酷い目脂は入所後になくなりましたが、長く生きることはできませんでした。おそらく、あの場から保護した猫たちには、世代やグループ間での差異はあるでしょうが、先天的な疾患・障碍となる因子を多かれ少なかれ抱えていたのではないかと思います。

 

つぼみの異常に気づいた生後3、4ヶ月の頃、つぼみを診察したある獣医は安楽死を勧めました。おそらく長く生きられる見込みはなく、検査や治療の甲斐はないだろうから、安楽死させるほうがよいという判断です。

安楽死については様々な意見があります。ここではそれらについて立ち入りませんが、原則的に、安楽死は回復不可能な疾病や、いかなる方法によっても緩和できない苦痛がある場合に提案される選択肢であり、つぼみへの提案は適切ではありません。

激しく差し迫った苦痛があるわけでもない以上、短命であるかもしれないと考えられたとしても、治療成果や効率、ケアの手間といった人間の都合で生命を絶つことは私たちの動物愛護への態度と相容れるものではありませんでした。

その後のつぼみは、鼻炎や目脂の程度は日によって変わるものの、特に体調を崩すことなくすごし、4歳となりました。

 

体のどこかに問題があっても、全体でそれを補うように、意識的・無意識的に工夫しながら生き物は生きてゆくものですが、つぼみもそのように自分自身でバランスを保っているのだと思います。

 

食事を楽しみ、おもちゃを獲物に見立てた遊びに飽きることなく夢中になる姿を見れば、つぼみの中にある生命は生きようとしているのを実感します。

 

つぼみの疾患には長年の多頭飼養環境の影響という、しかるべき理由があり、つぼみの姿を通して、亡くなった兄弟猫、同じ現場にいた多くの猫たちの姿が思い出されます。

 つぼみの母猫のシェリーも亡くなりました。

譲渡のトライアル中、譲渡時の誓約で室内飼いの徹底を強く述べているにもかかわらず、里親希望者が「外に行きたがっていた」「鳴いてうるさいから」とシェリーを外に出し、シェリーはしばらく行方不明となり、顔に傷を負って戻ってきました。

 これは誓約違反であり、シェリーはピース・アニマルズ・ホームに戻させましたが、温和で落ち着いたそれまでのシェリーらしさが失われていました。

 施設に戻ってから、少しずつ落ち着きを取り戻す様子を見せはじめていましたが、逸走から約1ヶ月後、シェリーは亡くなりました。シェリーの死が逸走中の怪我や、その間に起きていたかもしれないことと関係があるのかどうかはわかりませんが、この件は今も重苦しく私たちの心を圧しています。幸福になるようにと動物たちを送り出しているのであり、傷つかせたり、怖い思いをさせるためにそうしているのではありません。里親希望者の適性の確認を、より厳格に行うべきでした。

つぼみがよい里親に恵まれて、これから幸福な生を送ったとしても、 それで夭折した他の猫たちが「報われる」というものではないでしょう。そもそも、生の価値は寿命とは関係はなく、また、幸せであったかどうかは、本人にしかわかりません。

しかし、そうわかっていても、つぼみには、シェリーや兄弟猫たちが経験できなかった生活をさせてあげたいと私たちは考えています。 新しい暮らしの中でつぼみがいつかシェリーたちのことを思い出すことがあるなら、その中でシェリーたちも生き続けるからです。

 

つぼみの里親となっていただける方、一時預かりをしていただける方を募集しています。

フードの好き嫌いはありません。

物怖じせず、誰とでも馴染める人懐っこさがあります。

目薬の点眼などを除き、介護・介助的なケアは現時点では必要とはしていませんが、潜在的な病気のリスクは通常の猫より多くあります。毎日、丁寧に体調の変化を見ることが必要で、猫と暮らした経験がある方が望ましいです。

申し込み、お問い合わせの際には当ウェブサイトの譲渡一時預かりボランティアの項目をご参照ください。

皆さんのご協力をお願いします。

  • 名前:つぼみ
  • 性別:雌
  • 年齢:4歳
  • 体重:1700グラム
  • 避妊手術:未
  • ノミ・ダニ・寄生虫駆除:済
  • 猫エイズウイルス感染症:陰性
  • 猫白血病ウイルス感染症:陰性