昨秋から年末にかけてピース・アニマルズ・ホームには約70件のご相談があり、一時的に預かった動物を含めて計58頭の動物を受け入れました。暖冬の影響か、病気や老衰などによる死亡頭数は少ないものでしたが、未熟児状態で保護した幼猫や、ノミ・ダニなどに酷く寄生された状態で保護した仔猫の死亡率は高いままでした。
何度か述べていますが、ピース・アニマルズ・ホームには近年、猫に関する相談や保護要請が増加しています。特にいわゆる野良猫の保護に関し、保護活動に対する何らかの公的なサポートの整備と、保護に携わる方たちとの連携の必要性を強く感じています。
本県においては15自治体の内、富山市のみが地域猫活動への公的な助成を行うという状況であり、概して動物の保護活動は、一般の県民の善意と資力に大きく依存する形でなされていると言えるでしょう。
県は昨年より引き取った猫の譲渡率をあげるために譲渡マニュアルの作成や仔猫用のケージを動物愛護センター内に設けるなど、猫の高い致死率を減らす努力をしており、また予算の制約などによる行政対応の限界についても理解しますが、公的なサポートを十分に頼ることができない現在の保護活動のあり方は極めて不安定であるというのが保護現場での実感です。
継続的な動物の保護活動は、諸費用、保護作業や動物のケアに従事できる人員、保護・管理・再社会化・譲渡という一連の流れの段階の各々に関する知識や経験を有する人材といった要素が揃わなければ困難です。どれが欠けても上手くはゆきません。
ここ数年で動物愛護への関心は高まってきていると感じますが、実際に活動に関わるのは難しいと言う声を聞くことがあります。その原因の一つは、活動をはじめるまでのハードルの高さにあるのではないでしょうか。
活動をはじめても、上記のような条件が常に良い状態で維持され続けるわけではない以上、個人あるいは団体として既に一定の活動をしていたとしても、これらの要素の何かに支障が出ると、活動はそこで中断されます。
動物愛護に関する調査・啓発であれ、保護であれ、活動の中断によって残されるのは、まだ保護されていない動物たちです。また、保護活動にも固有のスキルとノウハウがあり、それは活動する人や団体に蓄積されてゆくものですが、動物愛護活動は少数のコアメンバーによって担われることが多く、活動の意図せぬ中断により、活動上のスキルやノウハウの受け継ぎが十分になされず、それらが死蔵あるいは失われてゆくことは動物愛護活動の発展においても望ましいことではありません。
直接的な費用の公的助成は難しいかもしれません。しかし、たとえばレスキュー一つをとってみても、そこには様々な過程があります(保護作業前のリサーチ、周辺地域の方への了解や理解の確保、動物の保護後の検査、治療、譲渡、必要に応じた人的・経済的協力の募集、問題の再発防止に向けた取り組み等々)。これらを円滑に行う為の啓発活動、たとえば不妊・去勢手術の必要性や動物の遺棄・虐待防止、衝動的な生体購入の抑制、動物を家族として迎えるにあたり、購入ではなく譲渡という選択肢があることの周知徹底など、公的であるからこそ力を発揮できる事柄が多くあります。
本県の動物愛護管理推進計画にも、「毎年約1千頭の命を致死処分している現実を認識し、飼い主はもとより、行政、関係団体等の連携・協力の下、犬猫の致死処分頭数をゼロに近づけるよう、取り組まなければならない」、「猫における不妊・去勢手術の啓発や地域猫活動の推進、終生飼養など県民全体の愛護思想のさらなる普及が求められる」と記載されています。また、動物愛護推進のための富山県の役割として、第一に「動物愛護管理の普及啓発」が掲げられてもいます。何らかの弾力的かつ具体的なサポート体制が早急に整備されることを望みます。
県の動物愛護協議会においても、現場からの声や意見をしっかりと伝えてゆきたいと考えています。
動物の保護に関わる方や動物愛護活動に関心のある方を繋ぐ水平的なネットワークの充実化も重要な課題です。
ピース・アニマルズ・ホームは創設当初より、動物愛護活動に携わる方たちの連携を呼びかけてきました。
孤立した状態での活動は独善的なものになりやすく、バランスを欠きがちで、長いスパンで見た場合の継続性にも支障があります。たとえば20年、30年という時間の中で動物愛護活動を確かなものとしてゆくためにも、交流・協力・連携は必須ではないでしょうか。昨秋に開設した片原横町の猫舎をこうした取り組みの為の場としてどのように活用できるかを模索してゆきたいと考えています。
ピース・アニマルズ・ホームは動物愛護を目的として設立され活動していますが、動物たちの保護を通じて見えてくるのは、たとえば貧困や格差、コミュニティ内の孤立や親族間・家族間の断絶といった社会問題です。
こうした動物と関わる社会問題の解決への努力と、様々なレベルでの協力関係や体制作りに励まなければならないと考えています。
今年も皆さんのご協力をお願いします。