里親・一時預かりボランティアの募集:シロ

人と犬との関わりは古く、様々な目的に応じて多くの犬種が作出され、時々の状況や時勢が求める改良がなされ、人と犬との関係性も変わってきました。本来、猟犬や闘犬として作出された犬種であっても温和な性格を帯び、家庭犬のように来客や見知らぬ人にも親しげに接してくれるものもいます。今、私たちが見かける犬の多くは、もともとは狩猟や作業の為に作出されたものですが、そうした本来の実用目的で犬を求める人は多いとは言えないでしょう。

けれども、頑強な体と賢さを備え、飼い主だけに心をひらく犬とパートナーシップを組み、獲物を探して山野に暮らす人と犬のイメージは私たちの想像力の中に根強くあり、柴犬をはじめとする日本犬には、かつての日本人は犬たちとそのように暮らしていたのかもしれないと思わせるところが確かにあります。

 

実際に私たちが犬たちとそんな暮らし方をしていたのか、またそうした狩猟生活がよいものであったのかどうかはともかく、長い間、日本犬と人がかつて営んでいたかもしれないそうした生活を、シロはかなり良い待遇を受けて、飼い主の方とすごしていたようです。

裏手には敷地の山があり、庭の池には鯉やメダカが泳ぐ家で、シロは兄弟犬のクロと共に専用の広い部屋をそれぞれ与えられ、小さい頃から飼い主の方と暮らしていました。庭木の手入れをする飼い主の傍で走り回ったり、一緒に山道を散歩したりすることはとても楽しかっただろうし、年をとっても老いを感じさせない強健な身体を鍛え上げることに繋がったと思います。

 

シロがピース・アニマルズ・ホームに来ることになった理由は、飼い主の方が認知症を患い、施設に入所する必要が出た為です。飼い主は長く一人暮らしをしており、施設への入所後もヘルパーの人達の協力を得て、シロや魚達の世話や庭の手入れを出来る限りしていましたが、毎日可能なわけではなく、犬達の逸走の危険も出てきました。

 

飼い主と遠く離れた場所で暮らしていた彼の家族の一人は、自分の生活が困窮しているため、シロたちを殺処分しようとし、実際に動きはじめていました。しかし、認知症が進行しても飼い主の生き甲斐であり続けるシロたちを殺すことは彼のメンタルに酷い影響を与え、病状も悪化させるので他の方法を探してほしいと述べるヘルパーの方たちの訴えや、身勝手な理由による動物の引取りを行政が拒めるようになった動物愛護法を根拠とし、殺処分を思い止まらせようとした行政担当者らの説得、シロたちのかかりつけだった動物病院の紹介などを経て、ピース・アニマルズ・ホームでシロたちを預かり、里親を探すことになりました。

 

シロに実際に会う前、飼い主の家族から、シロたちは飼い主以外には全く懐かない犬と聞かされ、体格も大き目の日本犬ということもあり、シロの預かりに不安があったことは事実です。しかし、実際のシロたちはおそらく昔風の扱い方であったと思いますが、飼い主に大切に扱われ、しつけを受けていたのか、心配していた噛み癖もなければ威嚇もせず、預かりに訪れた私たちを怖がって飼い主の背後に隠れる兄弟犬を守ろうとする素振りも見せる犬でした。

 

シロには日本犬的な気難しさが確かにあります。

プライドが高く、周囲の状況や、人であれ犬であれ自分に関わる相手の言動や感情をとても注意深く観察しており、相手と自分との関係性を見定めて行動を決定しています。からかったり見下す態度や、過度に甘やかす態度は禁物です。散歩や世話をする相手によって、また同じ人でも対応に変化があれば、シロの態度は変わります。

 

対人的・攻撃的な噛み癖、威嚇癖はピース・アニマルズ・ホームへの入所後には示したことはなく、また、これまでにもなかったと聞いています。しかし、人、動物への好みはあるようで、初対面の人やピース・アニマルズ・ホーム内の特定の犬や猫に対して警戒するように吠えることはあります。逆に、全く気にしない動物たちもいます。日本犬は苦手のようです。

散歩については、シロたちの預かりの現場に立ち会った関係者以外がハンドラーとなる場合、シロが散歩をリードしたがる傾向があります。体力には衰えを全く見せないので、散歩に十分な時間をかけられる余裕と、ハンドラーにそれなりの体力が必要でしょう。また、「お手」のようなしつけは得意ではありません。

実際に猟犬として使役される日本犬については、猟期には山で共に行動し、それ以外の期間も飼い主と家の中で一緒にすごすためか、特に細かなしつけをしなくても飼い主の考えや意思を読み、阿吽の呼吸でそれぞれの家風にそった行動をするようになるという、日本犬の賢さと忠実さを語るエピソードは数多くあります。

シロとその飼い主がどのような暮らし方をしていたのかはわかりませんが、認知症が進んだ段階でも、シロたちのことを忘れずに、この犬たちをお願いしますと深く頭を下げて送り出された際のふるまいからすると、猟には出なかっただろうけれども、恵まれた自然環境下で一緒にすごした飼い主とシロたちには強い一体感や絆があっただろうし、そうしたシロの経歴が今の行動に影響している可能性は大きいと思います。

犬としての自立した個性をまず尊重でき、信頼できる人間であるとシロが認め、シロの側から甘えてくるまで待てる方、日本犬の特質と共に、保護犬への理解を有する方がシロの次の飼い主には望ましいでしょう。

認知症を患うと、気分の上下が激しく、感情的になることも多いですが、飼い主の方が入所している施設には小型犬が飼われていて、飼い主はその犬をとても可愛がり、気分の落ち着いた日々をすごしておられるとのことです。

私たちもできるだけのことをシロにしてあげたいと思っていますが、残念ながら私たちがシロのパートナーになることはできません。

 

シロの兄弟犬のクロは先月、正式に譲渡が成立しました。シロもトライアルにまで至りましたが、里親希望者の方のお住まいが通学路に面しており、子供たちの通過がシロへの刺激・ストレスとなる為、里親となることを断念されました。

里親を希望されていたご夫妻や子供たちとシロとはとてもよく馴染んで良い関係を築いておられたので、子供が苦手という訳ではなく、「家族」と認めたもの以外の人に対する日本犬的な警戒心が今回の場合は裏目に出たということと、また、これまで初めての体験である多くの子供たちの存在に、シロが順応できそうになかったことが理由といえるでしょう。里親希望者の方は非常に残念がっておられました。

 

シロの里親となって頂ける方、一時預かりをして頂ける方を募集します。高齢犬に属する年齢ですが健康に問題はなく、歯の状態もよいです。犬種については飼い主およびご家族の方から純血種の柴犬であるとお聞きしましたが、他の犬種、他の日本犬の血が入っているのではないかと思います。

申し込み、お問い合わせの際には当ウェブサイトの譲渡一時預かりボランティアの項目をご参照ください。
皆さんのご協力をお願いします。

  • a)名前:シロ
  • b)性別:雌
  • c)種類:柴犬(※他の犬種とのミックス犬である可能性もあります)
  • d)年齢:10歳以上
  • e)混合ワクチン接種:(済) 
  • f)体内寄生虫駆除:(済) 
  • g)ノミ・ダニ駆除:(済) 
  • h)狂犬病予防注射:(済) 
  • i)避妊・去勢手術:(済) 
  • j)マイクロチップ挿入:(未)
  • k)フィラリア(陰性)
  • l)体重:約13キログラム