転倒して背骨を折る重傷を負った一人暮らしの高齢男性の親戚の方から、彼が飼っていた犬を保護してほしいという要請がありました。男性は受傷後、入院して手術を目前に控え、退院後はリハビリセンター、介護施設に入所する見込みで、これ以上の飼養は不可能ということでした。
病気や怪我を理由とする動物の預かりや里親探しは特に珍しいものではありません。しかし保護介入した後、今回の件は、移動販売、虐待、多頭飼養、営利のみを追う不適切なペット業者、適正な動物飼養知識の未普及、高齢者の動物飼養という、動物に関する典型的な問題が山積した、非常に凄惨なレベルの事例であることが判明しました。
以下、本件について概要を述べ、保護した3頭の里親になって頂ける方と一時預かりをして頂ける方の募集を行います。
ピース・アニマルズ・ホームに今回の保護依頼が寄せられたのは昨秋でした。男性の親戚によると、彼は昨春より仔犬を飼い集めはじめていたようでした。ペットショップや移動販売の店員に仔犬を抱かせられ、男性に無邪気に甘えてくる仔犬たちの仕草に「癒され」、次々と購入していったとのことです。いわゆる「抱っこ商法」、「抱かせたら勝ち商法」です。
親戚と共に行った男性の家の様子は凄まじいものでした。犬専用の食器類がなく、あらゆる居室の床にドッグフードが直接撒かれており、それらには白カビが発生したものも多く、鼠のものと思われる糞が散乱していました。水飲み用のボウルもなく、どのように仔犬たちが水分を摂取していたのかはわかりません。親戚の方によれば、犬の散歩もしていなかったということです。
長く家を丁寧に管理し、適正な動物の飼養を行っている方でも、突然の怪我や病気によって一時的に家の中が荒れることはあります。しかし今回の場合、フードの腐敗の程度などから男性は受傷以前より、こうした不適切で不衛生な飼い方と生活を続けていたと思われます。保護現場にはパピヨン、マルチーズ、2頭のチワワの計4頭の犬がいましたが、どの犬も人を極端に怖がり、家具などの影に隠れていました。
保護依頼を受けた際の、仔犬に癒された男性という印象からかけ離れた現場、何かを隠しているような親族や関係者らの現場でのぎこちない言動や雰囲気、仔犬たちの尋常ではない怯え方から、本件について私たちに明らかにされていないことがあるのではないかと彼らに訊ねました。親戚の方は重い口を開き、実は男性が飼っていたのは保護現場にいる4頭だけでなく、他にも少なくとも4頭の仔犬を購入し、その内の1頭は、男性が虐待死させたと彼自身が述べており、現場にいない残りの犬たちも同じ目にあった可能性が高いと答えられました。
この証言は慎重な取り扱いをする必要があります。ここでは詳細を述べませんが、虐待された仔犬が殺された際のエピソードは具体的なものでした。男性の家には保護現場にいた仔犬以外の犬の血統書も不完全ながら幾つか残っており、確かに柴犬、ミニチュアダックスなども飼われていたようです。しかし虐待の証拠となるものは保護介入した際には現場では確認できず、また男性とは保護要請から今に至るまで直接的に話をさせてもらってはいない為、この証言が事実であるかどうかは現時点でも判明していません。わずかな期間だけ男性に飼われていた仔犬たちはどのように扱われ、どうなったのか。男性が虐待目的で仔犬たちを購入していた訳ではなかったであろうことは、現場に残っている高価なドッグフードと、チワワやパピヨンの首輪に付けられていた御守りからも推察されます。なぜ、このような事態になったのか。
虐待死の証言の真実性の検証を措いても、この飼養環境だけでも指導を受けるべきものであり、購入後1年も経たず、複数の犬が死亡・消息不明となっている事態も異常です。
保護した4頭をピース・アニマルズ・ホームで受け入れるにあたり、我々は、この男性に今後、絶対に動物を飼わないという念書を書かせ、この4頭の所有権を放棄させ、一連の流れについて県に報告しました。彼への対応について県は検討中とのことです。
保護した仔犬たちは、入所当初は威嚇が激しく、人との関わりや散歩にも恐怖を示していました。飼い主の親戚の方の証言が事実であれば、この仔犬たち自身は殴打などの直接的な暴行を受けていなかったとしても、他の仲間が殺傷されるのを間近で目撃していた可能性があります。男性に購入される以前も移動販売などの劣悪な環境下に置かれており、適切な社会化過程を経ていたとも思えず、仔犬たちのそうした行動は十分に考えられることでした。
仔犬たちに毎日、声掛けをし、少しずつ散歩や外の様子に慣らしてゆきました。少しずつ人に甘えはじめるようになり、彼らの本来の個性や良さが発揮できてきたように思われた時点で里親探しを開始しました。保護した4頭の犬の内、1頭のチワワはピース・アニマルズ・ホームのボランティアを介して里親が決定しました。犬の飼養経験がある方のお宅で約1ヵ月ほどのトライアルを経て、先住犬との相性もよかったため、正式な譲渡に至りました。
他の3頭の仔犬の里親となって頂ける方及び、里親が決まるまでの一時預かりをして頂ける方を募集します。
3頭とも健康に関して、現時点での検査では異常はありません。しかし幼犬であり、遺伝性疾患の有無も含め、正確な結果が得られていない場合があります。劣悪な環境に長くいたこともあり、ある程度まで成長してから再検査をして頂く必要があります。寄生虫駆除は念の為に現在も続けておりますが、それも含めて丁寧な観察をして頂く必要もあります。
今回の件である重要な役割を果たされたのは、ピース・アニマルズ・ホームの募金箱設置協力もして頂いている、にのみやペットセンター新庄店の店長さんです。
仔犬たちを飼養していた男性の入院後、彼の家を訪れた親戚の方たちは当初、残っていた4頭の犬たちをどのように扱えばよいかわからず、すべて殺処分するしかないと考えていました。
保健所に送る前に、せめて最後に仔犬たちを綺麗に整えてあげようとトリミングのために訪れたにのみやペットセンター新庄店で、そうした事情を聞いた店長は、この仔犬たちはまだ幼い、殺処分ではなく、仔犬たちのために出来ることをしようと親戚の方たちを説得してピース・アニマルズ・ホームを紹介し、私たちへの保護連絡に繋がりました。もし、親戚の方たちが仔犬たちをトリミングに連れてゆこうとしなかったとしたら、あるいは連れて行ったのが動物愛護に関心がなく、営利だけを追求するような他の店であったとしたら、この仔犬たちは既に殺処分に回されていたかもしれません。
きわどいところで助かった仔犬たちです。この仔犬たちを大切に支え、一緒に暮らして頂ける方のお申し出をお待ちしています。
申し込み、お問い合わせの際には当ウェブサイトの譲渡および、一時預かりボランティアの項目をご参照ください。
皆さんのご協力をお願いします。
追記。マロン、ライト、パピコの正式譲渡が成立いたしました。皆さんのご協力ありがとうございました。
- a)名前:マロン
- b)性別:雄
- c)種類:ロングコートチワワ
- d)年齢:1歳未満
- e)混合ワクチン接種:(済)
- f)体内寄生虫駆除:(済)
- g)ノミ・ダニ駆除:(済)
- h)狂犬病予防注射:(済)
- i)避妊・去勢手術:(未)
- j)マイクロチップ挿入:(未)
- a)名前:ライト
- b)性別:雄
- c)種類:マルチーズ
- d)年齢:1歳未満
- e)混合ワクチン接種:(済)
- f)体内寄生虫駆除:(済)
- g)ノミ・ダニ駆除:(済)
- h)狂犬病予防注射:(済)
- i)避妊・去勢手術:(未)
- j)マイクロチップ挿入:(未)
- a)名前:パピコ
- b)性別:雄
- c)種類:パピヨン
- d)年齢:1歳未満
- e)混合ワクチン接種:(済)
- f)体内寄生虫駆除:(済)
- g)ノミ・ダニ駆除:(済)
- h)狂犬病予防注射:(済)
- i)避妊・去勢手術:(未)
- j)マイクロチップ挿入:(未)