新年の挨拶にかえて:ピース・アニマルズ・ホームの防災対策などについて

新年の挨拶を申し上げます。

昨年は会員・ボランティアの皆さん、動物たちの里親となっていただいた皆さん、寄付や様々な形でサポートしていただいている皆さんから多くのご協力・ご声援をいただきました。今年もよろしくお願いします。

 

 

2018年は日本列島を災害が襲い続けた年でした。

 

  • 2月:福井を中心とした豪雪。
  • 6月:大阪北部地震。
  • 7月:西日本豪雨(220人以上の死者)。
  • 7月~8月:災害級の猛暑(7月だけで熱中症の死者が133人)。
  • 9月:北海道胆振東部地震(土砂崩れなどで41人が死亡)。
  • 8月後半から9月に相次いで上陸した台風により、20人以上の死者。

 

災害の爪痕は今も残っています。

大阪では地震と台風によって損傷した屋根瓦の修復の目途が立たず、ブルーシートで補修しながら暮らしておられる方が多くおられます。

 「大阪北部地震、今年の災害で住宅被害最多 発生から半年

 

年末のTBSの番組で、こうしたブルーシートがなくなるのは2020年3月となるのではないかという大阪の茨木市長の言葉が紹介されていました。

被災地の現在をとりあげた特集では、西日本豪雨で大きな被害を受けた真備町では復興に向けた活動が始まっている一方で、夜になると住宅地には明かりがほとんど灯っておらず、被災された方たちの生活の、復旧にはまだ遠い現状が映し出されていました。

 

広島では年末になっても、まだ1000世帯以上が自宅に戻れていないとの報道が出ています。

【西日本豪雨から半年へ】 1000世帯以上がまだ自宅へ戻れず 生活再建の岐路に立つ被災者

 

41人の死者が出た北海道の厚真町では、地震から4か月たった今でも、仮設住宅に123世帯が生活しているとの報道が出ています。

北海道地震から4か月 生活再建が課題

 

災害報道では、動物とともに避難所に向かう被災者の方たちの様子がリアルタイムで報じられたり、災害発生時に逸走した動物たちを探す飼い主の方たちの行動にも注目が集まるなど、動物たちもまた被災当事者であることがわかるニュースも報じられました。

規模が大きなこれらの災害では、多くの動物たちや、個人・団体を問わず動物保護に携わる方たちも被害を受けたのではないかと思います。

最大で震度6弱を記録した今年1月3日の熊本地震に関する気象庁会見では、記者との質疑で、こうした地震は日本のどこででも起きうるとの発言がなされていました。

会見で述べられた「日本全国どこでいつ、この大きさの地震が起きてもおかしくない。他人事とは思わず、身の回りに注意を払っていただきたい」という言葉を、私たちは真摯に受け止める必要があります。

 

こうした災害がもたらした被害を風化させないように関心を保ち、被災地で復旧・復興に向けて日々活動している方たちにどのような支援ができるのかを考え、できる範囲内で支援を行うとともに、こうした災害を他人ごとではなく、いつ自分たちの身に起きてもおかしくないものととらえて、日頃から備え続けなければならないでしょう。

昨年の富山県動物同行避難訓練の様子から。
昨年の富山県動物同行避難訓練の様子から。

ピース・アニマルズ・ホームとしては、対象に応じて次のような3つのカテゴリーでの災害対策を考えています。

  • 能町施設・猫舎の動物たち。
  • ピース・アニマルズ・ホーム会員の方たちの動物たち。
  • 能町施設・猫舎近隣の動物たちや富山県内の動物たち。

 

富山県内で重大な災害が発生し、動物と暮らす方たちへのサポートを行政などと協力しながらピース・アニマルズ・ホームが行う際、災害時でもピース・アニマルズ・ホームの関連施設が安定的に運営されていることが前提となります。

その為の課題としてはフード・水などの十全な備蓄、ピース・アニマルズ・ホームの能町施設・猫舎が被災し、現在のスペースが使用不可能となった場合の対処、会員の方たちが被災している場合に、同伴避難が可能な場所の確保・提供などがあげられます。しかし、こうした対応については予算や人員、施設の問題もあり、現状では準備は万全とは言えません。

 

たとえば、うさぎのフードについては皆さんから継続的にフードをご提供していただけていることもあり、現時点でも1か月分のフードは確保できていますが、犬・猫たちのフードについては保管場所の問題もあり、常に必要分を確保し続けていられるわけではありません。

 備品類についても、年末に行った点検では大型犬用のキャリー、ケージなどに経年劣化や損耗が著しいものがあり、できるだけ早く交換・補充する必要があります。

 能町施設・猫舎が被災し、現在の飼養スペースが使用できなくなった場合、犬舎の外壁が倒壊しなければ、約80坪ほどの犬舎内の広場にテントなどを設けて仮設の飼養管理の場とし、ウサギや鳥、げっ歯類など温度管理がよりシビアに求められる小動物については能町施設とは別の場所へ避難させることを考えています。しかし、テントや温度管理などに必要な備品の調達、ウサギや鳥たちのための物件探しは十分には進んではいません。フードなどの備蓄場所、同伴避難が可能な場所についても、そこが災害によってダメージを受けては仕方がないので、富山県の過去の災害、地盤の強弱、公共的な交通手段を前提としたアクセスのしやすさなども考慮して選定を進めていますが、確定的なものはまだ得られていません。

 

施設の災害対策上の様々な問題を根本的に解決するには施設の改築・増強や、より安定した地盤への移転などが必要であると考えています。しかしそれには多額の費用と時間を要しますし、災害がそうした改築・移転などを待つわけでもないので、想定されるリスクに現在の施設と設備、人員配置で今どのような備えができるかを検討・模索しています。

普段の動物たちのケアやレスキュー作業、相談対応などでこうした防災対策のための時間や人員を十分に確保しきれていないという事情もありますが、今年はこうした施設の防災対策の充実に力を入れてゆきたいと考えています。そのためには皆さんのご協力も必要です。よいアドバイスなどがあればお知らせください。

 

 

施設のハード面の備えとともに、富山県内の災害に関する歴史的・地理的な調査を進めています。

富山県ではここしばらく大きな災害は発生してはいませんが、湾と山に挟まれ、大きな河川が何本も平野に流れる地形的には、地震、津波、台風や豪雨による洪水、河川氾濫、土砂崩れなど、様々な災害が発生するリスクは他県同様にあると考えています。

 

歴史的には大規模な地震災害は1585年の天正地震、1858年の安政飛越地震が目立つ程度ですが、台風や河川氾濫などによる水害は1960年代まで頻発しています(1969年8月には約13000戸の浸水被害)。温暖化現象による豪雨、それに伴う土砂崩れや、北陸特有の豪雪災害についても警戒が必要でしょう。

 

自治体が公開しているハザードマップで、県内の様々な場所で想定される災害上のリスクが可視化されています

 (※たとえば高岡市は様々なハザードマップを公開しています)。

こうした情報などをもとに、それぞれの地域での、より具体的で実感の伴う災害対策を考えるには、県内で発生した過去の災害を検証することが必須であると考えています。

 

この作業はピース・アニマルズ・ホームの普段の保護活動から外れることもあり、団体の事業・活動として進めてゆくかについても決まってはおりませんが、県内の方が自分たちのお住まいの地域の防災を具体的に考える上でもこうした取り組みは必要になるのではないかと思いますので、可能であればこれらの情報について共有できるような態勢や、勉強会のようなことも準備してゆければと考えています。

 

なお、動物と暮らしている方の災害への普段からの準備や心構えとしては、環境省作成のガイドラインが有益です。

 

災害、あなたとペットは大丈夫?人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>【平成30年9月発行】

人とペットの災害対策ガイドライン【平成30年3月発行】」  

 

前者の一般飼い主向け災害対策ガイドラインには、災害に備えて普段から飼い主がするべきことのチェックリストが掲載されています。

フード類の備蓄や動物の所有者明示の必要性などよく知られたものに加え、避難所に向かう際の危険箇所や迂回路、二次避難場所の確認など、実践的な内容となっています。

 

ハザードマップを参照し、たとえば水害や道路液状化のリスクがある地域にお住まいであるなら、道路への冠水がはじまっていたり、普段のような歩行が困難となったりする中で、動物たちを連れて本当に避難所まで行くことができるのかどうかを考えたり、動物と同じ重さの重りなどを入れたキャリーやバッグなどをもって、実際に避難経路を歩いてみる確認作業は大事です。大型犬や複数の動物たちと暮らしていたり、歩行に困難を抱えておられる方の場合、そうした事態に備えて何らかの対策を講じておくことや、また、町内にそうした方がおられる場合、避難が無事にできるかどうか、普段から話し合ったり、関心を寄せて助け合うことも重要でしょう。

 

今年の動物愛護フェスティバルでのピース・アニマルズ・ホームのブースでも、可能であれば災害対策に関する何らかの啓発的な展示ができないかと考えています。

昨年の富山県動物同行避難訓練の様子(避難所での獣医師による健康診断)。
昨年の富山県動物同行避難訓練の様子(避難所での獣医師による健康診断)。

今年は動物愛護法の改正が予定されています。

ここ数年、問題化している動物虐待の厳罰化や、悪質な生体販売業者への規制強化などがなされるかどうかは、動物たちの保護活動の現場にも直結するので、審議の動向を注視してゆきたいと考えています。

今年も皆さんからのご協力をお願いします。